マチュピチュ、氷上ワカサギ釣りと並ぶ、日本人なら人生で3大やり遂げたいことの筆頭に挙げられる富士登山。今回は土日を利用して1泊2日で登ってきたので事前準備から体験内容について紹介しようと思う。
富士山といえば日本最高峰の山。初心者には体力的に到底登れないのではないかと思われがちだが、初心者ルートである「吉田ルート」であれば意外と登れてしまうのである。
本記事では私の体力レベルも含め、準備・計画から実際に登った体験談を紹介するので、登ってみたいという人は参考にしていただければと思う。
目次
富士登山 初心者ルート「吉田ルート」
富士登山のルートは以下4ルートある。今回は初心者ルートである「吉田ルート」を登った。
- 吉田ルート
- 富士宮ルート
- 須走ルート
- 御殿場ルート
吉田ルートの特徴としては以下となる。
- 出発地点: 山梨県側の吉田口5合目
- 特徴: 最も人気があり、多くの宿泊施設や山小屋が点在している。夜間の登山が盛んで、多くの人がこのルートを利用して夜間に頂上を目指し、日の出を楽しむ。
- 難易度: 初心者にも適している。
また、参考までに吉田ルート以外のルート情報を記載する。
【富士宮ルート】
- 出発地点: 静岡県側の富士宮口5合目
- 特徴: 頂上までの距離が短いため、時間的には最も短時間での登頂が可能。
- 難易度: 短い距離で高度を上げるため、体力的にはややきつい部分も。
【須走ルート】
- 出発地点: 静岡県側の須走口新5合目
- 特徴: 人出が少ないため、静かな登山を楽しむことができる。
- 難易度: 一部急な登りがあり、中級者向け。
【御殿場ルート】
- 出発地点: 静岡県側の御殿場口新5合目
- 特徴: 標高が低いため、登山距離が最も長い。大自然を満喫できるルート。
- 難易度: 長い距離を登るため、体力が必要。
富士登山 事前準備
富士登山をするにあたり、実際に私が行った事前準備について体力面、装備面、スケジュールそれぞれについて紹介する。
体力面
体力面の準備としては主にランニングを行って体力UPを図った。実際に準備して登って見た所以下をクリアできていれば最低限登れるのではないかと思った。
- 5km走れる
- 走っても膝が痛くならない足腰の筋力
根拠としては、私の体力がこれくらいだったから。主観的な情報のため目安程度に考えていただければと思う。
今回は登れはしたが下山後に膝が痛くて階段の上り下りができないくらい膝にダメージが出たので、筋力が少し足りなかった。また、登りも少しキツイと思うことがあったので余裕を持って登るにはもう少し体力を付けるのが良いかもしれない。
不安であれば事前に体力UPを図るとともに、低い山でも良いのでどんなもんか一度登ってみることをがおすすめだ。
富士登山の装備
これは実際に富士登山した時の私の服装。お金をケチったためほぼワークマンで揃えた。帽子がダサくバードウォッチング?と言われた。おしゃれを意識するのであればやはりmonbelとかなんとかフェースとかにすると良いと思う。登山時の写真がぐっとインスタ映えするぞ。
さて、富士登山の装備の詳細は他サイトの紹介を調べてもらいたいが最低限必要なものについて言うと以下は絶対に必要だと思う。
- レインウェア(上下)
- 登山靴
- 防寒着
- ライト(頭に付けられるやつ)
山の天気はとにかく変わりやすいし、雨が下から吹き込んでくることもある。富士登山ではレインウェアは上下セットのものが必須だろう。たまにポンチョみたいなカッパの人を見かけたが皆辛そうだった。
あと、レインウェアは防寒にもなるので雨がふらずとも無駄にはならない。標高が高くなるほど気温も下がってくるので防寒用にも持っておくべきだ。
ちなみにこれは登る直前の5合目の様子。ガッツリ雨が降ってしまったのでレインウェアは必須だった。
そしてこれが登山開始30分後ぐらいの6合目付近の様子。天気は一転して晴天。日差しが眩しく気温も高い。
このように山の天気は変わりやすい。どんな天候でも対応できる装備は準備しておくことだ。
登山靴は、ハイカットなら足首をサポートしてくれるし、ゴツゴツした岩場を分厚い靴底が守ってくれる。防水効果もあるので多少足場が悪くとも問題なく歩ける。とにかく専用のものを使用すると登山の難易度がぐっと下がるので用意した方が絶対によい。
これが私の登山靴。購入してから5、6年使用しているが重宝している。
ちなみに私は学生時代に一度スニーカーで登ったことがあるのだが、靴底に穴が空いて捨てる羽目になってしまった経験がある。下記が私が初めて富士山に登った時の装備。10年以上前の写真だ。
若い時は過酷な登山を若い体力と気力で乗り切ったのだが、たまたま悪天候にならず運が良かっただけだ。安く済まそうとこのような貧弱装備で登るべきではない…と私はこの無謀な登山で学ぶことができた。
防寒具について、ご来光を見るのであれば深夜に登山開始するのだがとにかく寒い。山頂についてご来光を待つ時など汗が冷えてしまって体温も下がってしまうので、防寒装備は必要だ。
私は長袖インナーにパーカー、ダウンベスト、レインウェア、ネックウォーマーを持っていったがそれでも結構寒かった。寒いと体力も消耗するので長丁場の登山時は特に体力温存にも装備は重要だ。
山頂では下記の服装のようにパーカーの上に写真じゃ分からないがダウンベスト、レインウェア上下を重ね着した。これでも寒かったのだから富士山頂の気温を舐めてはいけない。
ライトは夜中登山する場合は必要。ゴツゴツした岩場をライトなしで登るのは流石に無理なので必須アイテムなのだ。
私が購入したのは以下ライトだが、値段も安く光量もしっかりしていたのでおすすめだ。内蔵バッテリーなので電池いらずなのも良い。
これら全て揃えるとお金がいくら合っても足りないので、装備を持っていない人はレンタルすると良いだろう。
富士登山のスケジュール
登山スケジュールを参考までに紹介しよう。今回は下記スケジュールで登山した。
日付 | 時間 | イベント |
2023/9/9 | 7:30 | 新宿駅出発 |
9:18 | 富士山駅着 | |
10:00 | 五合目到着・軽食 | |
12:00 | 登山開始 | |
16:00 | 山小屋着 | |
17:00 | 夕食 | |
19:00 | 就寝 | |
2023/9/10 | 1:00 | 出発 |
5:10 | ご来光 | |
5:30 | 朝食 | |
6:00 | お鉢巡り(山頂めぐり) | |
8:00 | 下山開始 | |
12:00 | 五合目到着・ご飯 | |
13:30 | バス(富士山駅行き) | |
14:30 | 温泉 | |
15:12 | 富士山駅発 | |
16:58 | 新宿着 |
ポイントは登山開始時間。到着してからすぐに登りたい所だが、登山開始の五合目は高所なので必ず一時間以上体を慣らす時間を入れる。
また、日の出を見たい場合は夜中1時頃に山頂に向けて登山する必要があるので逆算した早い時間に就寝するようにスケジュールする。
これは深夜に山頂を目指して歩く筆者。夜中の0時に起床して1時に登頂開始したときの図。
その他のスケジュールは後は状況に合わせて決めるようにしてもらえれば良いだろう。
登頂時間は自分の体力を過信せずできるだけ最長の時間を設定しておけば無理なく登ることができると思う。
富士登山にかかった費用
富士登山にかかった費用も紹介する。ざっくり見積もったが以下の金額となった。
- 移動費:¥11,362
- 宿泊費:¥15,400
- その他:¥44,175
- 合計 :¥70,901
割りと高いだろうが、宿泊費用や装備をレンタルするなどで費用を抑えることは可能だろう。装備や食費などはその他に含めているので、既に持っている物や代用できるものがあれば積極的に活用してもらいたい。
詳細も記載しておく。装備はできるだけ安く済ませるためにワークマンのアイテムを積極的に採用している。
項目 | 料金 | 備考 |
電車賃 | ¥4,762 | 片道:¥2,381、新宿-富士山駅 |
特急券 | ¥3,040 | 片道:¥1,520、富士回遊 |
バス | ¥3,560 | 片道:¥1,780、富士山駅-富士スバルライン5合目 |
宿泊費 | ¥15,400 | 海抜一万尺 東洋館 シングル2食付き |
レインウェア(上下) | ¥4,900 | ワークマン、INAREM |
クライミングパンツ | ¥1,900 | ワークマン、クライミングパンツ |
パーカー | ¥1,500 | ワークマン、防寒用に利用 |
帽子 | ¥1,000 | ワークマン |
食費 | ¥3,000 | 1日目:朝、昼、2日目:昼 |
行動食 | ¥1,000 | 羊羹3つ、チョコ2つ、水:2L |
ライト | ¥1,300 | Amazonで購入 |
リュックカバー | ¥1,700 | 雨除け |
リュック | ¥10,000 | 10年前に購入 |
登山靴 | ¥15,000 | 既に持ってるやつ、値段は大体 |
グローブ | ¥500 | Amazonで¥500くらいのやつ |
トレッキングポール | ¥2,375 | 登山用の杖 |
合計 | ¥70,901 |
色々書いたが、この中でリュック、靴、グローブ、パーカーなどは既に持っているものだったので実際はもう少し費用は安くなった。
また、トレッキングポールについてはあると若干足への負担を軽減できるのであれば良いが無くても良いと思う。私は下記の商品をアマゾンで購入した。多少大きいが買って良かったと思う。
あと費用には書いていないがスマートウォッチがあると登山中の心拍数や歩いた距離、ルート、高度など確認できて便利なのでおすすめしたい。高度や位置情報は製品にもよるので買う際は気をつけてもらいたいが、私はGarminのスマートウォッチを利用している。
富士山までは特急「富士回遊」を利用
移動はバスが予約できなかったため、電車で行くことにした。電車は新宿からは富士回遊という特急電車を利用した。
これは富士回遊の外観。新宿駅から乗車した。
全席指定席だが、安く済ませたい場合は通路などを利用して乗車することも可能だ。しかし、特急券は1,500円程度だし、富士登山は体力消耗するのでできれば利用をおすすめしたい。
富士山に行くにはバスが一般的なのか、予約がすぐに一杯になってしまうのだが、電車は意外と予約できたので穴場である。
富士回遊は富士山駅で下車することになるため、登山開始の5合目までは更に路線バスを利用することになる。
路線バスは富士山駅を出た所にある。料金は片道1,780円。カーブがキツイ山道を1時間ほど走るためできれば座って行きたい所。
宿泊地:山小屋「海抜一万尺 東洋館」
宿泊地は「東洋館」という山小屋を予約。東洋館を選んだ理由は他の山小屋が予約一杯だったためだ。他に選択肢が無かったのである。
だが、結果として正解だった。良かった点は以下。
- 部屋は綺麗で快適
- 眺望が最高
- 7合目なので1日目が楽
特に部屋が綺麗なのが良かった。いくつか写真で紹介しよう。
これは東洋館の食堂?の様子。フローリングの床が綺麗で富士山にあるとは思えない設備だ。
室内からの眺望も最高で室内から雲海が見渡せる。
ここでゆっくりと座ってコーヒーを飲むことも可能だ。売店で色々と売っているのでちょっとした贅沢をしてみてはいかがだろうか?
ちなみに、私は眼下に広がる雲海を眺めながらビールを一杯やった。¥900と少々割高であるが思い出に残る最高の体験だった。是非トライしてみて欲しい。
寝室はこんな感じ。セパレートされた個別の空間がある。カプセルホテルのようなイメージを想像してもらえれば良いと思う。
個室内はライトと寝袋、服をかけるハンガーや荷物置きまである。
夜ご飯はこんな感じ。ご飯をおかわりできるのが嬉しい。
見てくれはシンプルだが、味付けも美味しく非常に美味しかった。朝ごはんはいなり寿司弁当。梅干しがついてるのが◯。
東洋館について色々と良い所を述べたが、ネックは少々高いことだ。やはり¥15,000という価格はちょっとした旅館に泊まれてしまう値段なので高い。コストを抑えたい人は早めに予約して安い所を抑えるべきだろう。
総運動量は脅威の4,000kcal
今回の富士登山の運動量をスマートウォッチで測定した結果を紹介する。
こちらは1日目に5合目から山小屋までの測定結果。2時間半で1,140kcal消費している。
そして2日目の結果がこちら。
山小屋から山頂を回って下山した際の結果。10時間活動して2,998kcal消費している。
まとめると2日間の消費カロリーは脅威の4,000kcalである。
行動時間が長い分消費カロリーが多くなるのは当然だが、これは通常の食事量ではカバーできない運動量である。そのため、行動食(羊羹やチョコ)などは必須であり、常にカロリー摂取しながら登山しなければすぐに枯渇して動けなくなってしまう。
消費カロリーだけ見ると富士登山すれば痩せるのでは?と思うかも知れないが、常にエネルギーを接種する必要があるのでダイエットには向かないことを先に言っておく。
山は自己責任、動けなくなる前に常に自己管理することが大切なのだ。ダイエットを意識して低カロリー食しか食べ無いとあっという間に動けなくなるぞ。
地獄の下山ルート
実は富士登山で最もキツイのが下山だ。まずは下山ルートの光景を見てもらいたい。
一見景色が良いルートに見えるのだが、この砂利道の坂をひたすらに降りていく。傾斜がキツイのもさることながら、同じルートをクタクタの体力で降りるのは精神的にキツイものがある。ゆえに地獄。
最初は空中散歩している気分で楽しいのだが、だんだんと飽きてくるのだ。足は正に棒のようになり、踏ん張りが効かなくなるし、つま先に体重がかかるの足も痛くなってくる。
一緒に登っていた友人も山頂を回っている辺りまではもう一度登ってもいいかも、なんて言っていたが下山中にもう二度と登らないとぼやく始末だった。
下山道で疲れ果て倒れ込む筆者の図。
精魂尽き果ててはいるが、ここから更に2時間ほど先程の画像のルートを下ることになった。疲れ果てているのは我々だけではなく、周りを見渡すと皆苦悶の表情を浮かべていた。
感想:登って良かった
さて、ここからは私が実際に登った魅力的な所について紹介する。
景色が非日常感すぎる
富士山は標高が高いため雲の状況で様々な様相を呈する。これが非常に幻想的で非日常感が感じられる。
これは6合目付近の様子。雲がかかって視界が悪く、霧がかかっている感じだ。
登っていくと徐々に青空が広がってくる。時折下から雲が登ってくる様子がエモい。
そして、雲の上の標高になると雲海が広がってきて遠くまで見渡す青空が広がる。普段は見ない濃い青空はなんとも言えない美しさに感動した。
こんな感じで雲海を眼下に見ながらひたすらに登っていく。
ところ変わってこちらが富士山頂の火口の様子。
荒涼とした風景はまるで宇宙のどっかの星である。草木どころか虫も動物も一切いない地獄のような光景だ。
どうだろうか、写真よりも実際に登ってみると澄んだ空気、風の音以外文明の音が聞こえない、五感全てで非日常感を満喫できるのだ。
ご来光登山が楽しい
ご来光登山では深夜1時ごろに出発する。山小屋を出ると眼下に静岡の夜景が広がる。まるで宝石箱のような夜景は息を呑むほどの美しさなのだ。
もうこの景色を見ただけでもうご来光なぞどうでも良くなるぞ。
そして、ちょっと見えづらいが星空も綺麗。スマホで撮影しても星がはっきりと捉えることができる。
天の川も見えるし、時折流れ星が流れているのがよく見える。人生でこんなにも星が見えたことがあっただろうか?いや、ない。星座を勉強してから望むとより楽しさは増すと思う。
ご来光がすごすぎる
ご来光を見るため多くの人が登山するため、大行列ができる。
大行列のため一時はご来光に間に合わないのでは?と思ったが日の出10分前に滑り込みで頂上へ到達することができた。運が良かった。
頑張って登って見たご来光は凄くオレンジ色で、きれいな朝焼けが美しかった。
山頂では皆ご来光のひかりで顔が真っ赤に照らされていた。
人も半端なく多いので早めに行って場所取りすると良いだろう。ただし無茶苦茶寒かった。
登山グルメが最高
登山に欠かせないのが食事。今回食べた物を簡単に紹介しよう。
まず、5合目で食べた食事がこちら。
唐揚げ定食は正直微妙だったけど標高高い所で食べるのは、本来の味以上に美味しいものだ。
富士山メロンパンという珍しいパンもあったので食べてみた。
周りはメロンパンのサクサクの所と同じ味で、てっぺんはココアパウダーがかかっており普通のメロンパンとは一味違う独特の味だった。コーヒーとまた合うのだ。
登山とくれば山頂でのコーヒー。
私は山に登ると必ず飲むことにしている。やはり日本最高峰の山の頂上で飲むコーヒーは格別の味だった。
カップ麺も食す。
散々体動かしたのでタンパク質多めのカップ麺をチョイス。山小屋では手に入らないカップ麺なのでちょっとした優越感に浸ることができた。
過酷な登山後に新宿で飲んだビール。
このビールが最高すぎて昇天しかけた。これを飲むために富士山を登ったと言っても過言ではない。
さいごに:人生1回は登ってもいいかも
富士登山の初心者ルートの吉田ルートを登った体験から、装備や計画、予算や魅力について述べてきた。富士登山に興味持っていただけただろうか?
富士登山は標高高いゆえに過酷で大変な面もあるのだがそれでも登る価値がある最高の体験だ。装備や準備をしっかりした上で登れば思い出に残る体験になること間違いなし。
人生で一度は登ってみてはいかがだろうか。