30代になった私は、少年の頃思い描いたカッコいい大人に未だなれていない。仕事でのミスや失敗が未だに多く、叱責や注意など日常茶飯事だ。日々消耗するだけの悲しい現実である。
最近は頭が固く、素直に失敗を受け入れられなくなってきているのか、注意や説教を食らった日にはガツンと殴られたような激しい動揺と共に、必死に自己弁護をしようと言い訳や反発をすることで自尊心をなんとか保っている始末である。
20代の頃は仕事を始めたばかりで、失敗は成長につきものと前向きに捉えることができたのだが、今はどうやらそうではないらしい。
成長するためには失敗とどのように向き合い改善していくことが大切だ。頭で分かっていてもそれができない…このままではマズイ、ということで私は一年発起して「失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織」という本を購入し読んでみることにした。
失敗との向き合い方について、この本を読んで得た知識を私なりにまとめてみたので、失敗に対する向き合い方に悩んでいる方に参考にしていただきたい。
ここで紹介することはあくまで私が重要だと考えピックアップした内容となるので、より深く学びたいという方は本書を購入して読むことをお勧めする。
本書はただエッセンスを述べているのではなく、具体例をいくつも示しながら説明しているため、より理解がしやすい文章構成となっている。具体例が多く全体的に何が言いたいのか、というところが若干ぼやけてしまう印象があったので、読む際はぜひメモを取り、自分なりに内容をまとめながら読んで見るのが良いだろう。
それでは、本題に入ろう。
目次
失敗の科学のポイント
本書のポイントは以下となる。
- 失敗を受け入れられない内的要因:認知的不協和
- 失敗を受け入れられない外的要因:他人からの非難
- 大切なのは「失敗は学習のチャンス」と捉えること
- 組織の発展も失敗への向き合い方が重要
- 成長型マインドセット、固定的マインドセット
失敗を受け入れられない内的要因:認知的不協和
人はたいてい、自分は頭がよく筋が通っていると考えている。自分の判断は正しく、簡単には騙されないと信じているのだ。しかし、その信念に反する事実が出てきたとき、自尊心が脅かされることで、信念と現実の矛盾が生じ苦しくなってくる。
この状態を、認知的不協和と呼ぶ。
認知的不協和とは、自分の信念と事実が矛盾している状態、あるいはその矛盾によって生じる不快感やストレス状態のことだ。
この、認知的不協和の苦しみから脱却する方法が2通りある。
- 自分の信念が間違っていると認める方法。この方法は、自分は思っていたほど有能ではない事実を受け入れなければならず非常に難しい。
- 事実を否定する方法。事実をあるがままに受け入れず、自分の都合の良い解釈をつける。あるいは事実を完全に無視や、忘れてしまう。そうすれば自分の信念を貫きとおせるのだ。
事実を否定する方法は楽に苦痛を回避することができるが、一方で失敗した事は何も改善されずまた同じ過ちを繰り返す…つまり何も成長していないこととなる。(いわゆる現実逃避というやつだ)
このように、認知的不協和というものが失敗を受け入れられない内的な要因となる。それでは、外的要因とはなんだろうか?
失敗を受け入れられない外的要因:他人からの非難
失敗を受け入れられない外的要因とはずばり、他人からの非難のプレッシャーである。
例えばこんな経験は無いだろうか。何か間違いが発生した際誰が悪いのかを追求する経験だ。つまり犯人探しである。これでは失敗が改善されるわけでもなく、ただ時間だけが無駄に浪費されていく。挙げ句の果に犯人を突き止めると非難や追求、酷い場合はみんなの前で叱責するということまで行い失敗した人を萎縮させてしまう。
人を非難しても、誤りや失敗が改善することは無く、逆に非難された側は余計自尊心が脅かされ、結果認知的不協和を増大させてしまう。
組織の場合は、怒られるのを恐れるあまり皆失敗を報告しなくなる。この結果、問題の改善が図られず失敗から学ぶことができなくなってしまうのだ。
失敗に対する非難やプレッシャーというのは失敗を受け入れられなくする外的要因となる。それでは、失敗から学ぶにはどうすれば良いのだろうか。
大切なのは「失敗は学習のチャンスと」捉えること
組織でも人でも、成長に欠かせないのが失敗である。そのため、失敗は駄目なことではなく「学習のチャンス」と捉えることが大切だ。
そもそも、人は何かを得るためには失敗をするしか方法が無い。生物の進化でも科学の発展も皆この失敗の積み重ねがあってこそなのである。
生物は同様の個体は存在せず必ず違う個性を持って生まれてくる。その個性が環境にフィットしなければ淘汰され、環境にフィットするものだけが残る。そして、最も良いパターンが正解となる。
科学では、ある事象に対して仮説を立て、様々な検証を行う。検証としては、特徴を複数のパターンに分け検証して成果があるものを残す。そしてそれに対して更に細分化したパターンを検証することで最適解を見つける。
頭で考えて、実行して成功するというトップダウン式で成功する確率が低いのだが、失敗を繰り返し、最適解を導き出すことが成功する確率が段違いなのだ。同様に失敗を重ね、そこからフィードバックして積み重ねる事無しに成長は無いのである。
世界は人が思っている以上に複雑で難しい。いくら頭で考えても正解は出てこないのだ。
このように失敗とは本来必要不可欠な要素だと、考えるマインドセットが重要だ。それを考えず只々失敗してそれで終わりにするのはもったいない。失敗している分だけ成長している証拠というわけだ。
これは、個人だけでなく組織活動でも言えることだ。
組織の発展も失敗への向き合い方が重要
組織の発展にも失敗を受け入れるマインドセットが重要だ。
組織では人と働くため、内的要因以外で外的要因である非難のプレッシャーが強い。
失敗をしたことに対して、犯人探しをしてキツイ叱責や責任追求をしたところで、人は萎縮しさらなる失敗の種になるだけで何成長もない。それどころか、貴重な時間も無駄に消費するだけだ。
失敗を非難することにより、メンバーは失敗を隠すようになり、更に状況が悪化してしまう。ただし、非難が100%悪いというわけではなく、完全放置もまずい。いずれも失敗から目をそらす現実逃避である。
重要なのは、現実を受け止めそこから改善策を検討することなのだ。このフィードバックにより適切な軌道修正がなされ上手く行く組織になるというわけだ。
成長型マインドセット、固定型マインドセット
人のマインドセットには以下の2つがある。
・成長型マインドセット:失敗を自分の力を伸ばす上で欠かせないものとして受け止める。
・固定型マインドセット:生まれつきや才能や知性に恵まれた人が成功すると考え、失敗を「自分には才能がない証拠」と受け止めてしまう。
成長型マインドセット..つまり信念を持ち失敗は成長に必要不可欠と考えれば、冒頭で話した認知的不協和による不快感を素直に受け止め、腐らずにそこからフィードバックをもらいより前向きに改善できるようになる。
失敗から学ぶための便利な手法
最後に、失敗から学ぶための便利な手法について簡単に紹介しておく。
ランダム比較試験(RCT)
ランダム比較試験とは、ある事象を検証する際にそれとは違う事象での検証を行い比較する手法である。例えば、アフリカの貧困問題があったとしよう。この問題を解決するため国へ資金援助した場合本当に資金援助が起因となって成果が出たのかがわからない。そこで、学校に教科書を配ってどうだったか、ということで比較することが可能となり、手法が失敗したのかどうかということがわかるというわけだ。
マージナル・ゲイン
マージナル・ゲインというのは、大きな問題を小さな課題に細分化してそれぞれに対して改善していくという手法である。小さな問題に対して、様々な施策をうち、その成果を積み重ねることで全体最適化を図るという手法である。
この2つの手法を駆使して、依然はトップダウン式に施策を打ち出していたものを、小さな検証を繰り返すことでボトムアップ式に意思決定を下すことが可能となる。
こうした手法はスポーツを始め、ビジネスの場でも様々な所で成果が出ている手法である。
さいごに
本書を読んで、「失敗から学ぶこと」が成長に必要不可欠だということを「なぜ」大切なのか、ということを論理的に学ぶことができたのは、本書を読んだ収穫である。
ただ、依然として「失敗と向き合う」ということは本書を読んだ後でも中々苦しいものがある。やはり、人間というものは易きに流れる生き物なのであろう。
今後はこの失敗からくる内的・外的要因への対処方法を模索していこうと思う所存だ。この件に関して何かおすすめの本などあれば教えて欲しい。
以上